ない過払い金|3 破綻企業または実質破綻企業に対する銀行の新規融資 破綻企業または実質破綻企業に対する銀行の新規融資の可否が問われるのは,以 下のような場合である。

過払い金を融資する場合、法的再建手続である。


再建,再編による既存の融資の回収の極大化を 図るための必要資金として位置づけるか否かは,正に経営判断の原則の適用場面で ある。
(4) 再編,再生計画実行中に必要な資金を融資する場合 再編,再建計画が企画,立案されても,その実行には一定の資金が必要であると ともに,その実行に至るまでに相手方企業グループが維持存続できるための資金が 不可欠であるが,その資金を相手方企業グループが新規に調達することは期待でき ないところから,結局,赤字補填資金としての融資の継続が必要とされる。
その場 合,如何なる期間,どの程度の金額まで赤字補填をするか,何時の時点で打ち切る かは,その再建,再編計画の遂行状況を見ながら流動的に対応すべき事項であっ て,正に経営判断の原則が適用されるべき場面である。
4 本件融資時点における相手方企業の概要と本件融資の概要 法廷意見からは,本件各融資先企業の概要等が明らかではないところから,本補 足意見の関係上,以下に本件融資相手方企業の平成6年3月期決算時の概要を記載 する(なお,計数は同期の公表決算書に基づいており,法廷意見及びその引用する 原判決は,公表決算数字を実態に合わせるべく補正した計数によっているので,以 下の計数の合計と法廷意見の計数とは一致しない。
)。
(1) D株式会社 アD株式会社の概要 Dグループの中核企業であり,理美容業等を経営するほか,G開発の実質的な開 発主体であり,また,Fホテルの土地,建物を所有し,同土地,建物を株式会社F (以下「株式会社F」という。
)に賃貸していた。
イ平成6年3月期決算(ただし,決算期変更で平成5年6月1日から10か 月) 売上高45億4300万円 営業損失△20億8800万円経常損失△34億6000万円 借入金総額548億4600万円(うち拓銀分283億2300万円) 資本合計△63億7900万円(債務超過) ウ本件融資 a 被告人A及び同C関係 平成6年4月26日から同年6月30日まで,4回に亘り合計4億5000万円 (1回当たり5000万円から2億円,運転資金) b 被告人B及び同C関係 平成6年8月1日から平成7年8月31日まで,19回に亘り合計22億100 0万円(1回当たり5000万円から2億円,運転資金) (2) 株式会社F ア株式会社Fの概要 Fホテル(地上11階地下1階,客室数304室,大宴会場2箇所,レストラ ン,結婚式場)の運営会社であり,平成5年4月に開業した。
イ平成6年3月期決算 売上高30億4400万円 営業損失△21億3500万円経常損失△24億3000万円 借入金総額31億8900万円(全額拓銀からの借入れ) 資本合計△19億2000万円(債務超過) ウ本件融資 a 被告人A関係 平成6年4月8日から同年6月20日まで,6回に亘り合計3億9000万円 (1回当たり2000万円から1億7000万円,運転資金) b 被告人B関係 平成6年7月8日から平成9年10月13日まで,47回に亘り合計34億89 00万円(1回当たり2000万円から1億5000万円,運転資金) (3) 株式会社E ア株式会社Eの概要 総合健康レジャー施設「E施設」の運営を目的とする会社である。
イ平成6年3月期決算 売上高4億0250万円 営業損失△2億1000万円経常損失△4億円 借入金総額116億8900万円(うち拓銀分37億0800万円,たく ぎん抵当証券分50億円) 資本合計△14億8900万円(債務超過) ウ本件融資(被告人B及び同C関係) 平成6年10月31日から平成9年6月20日まで,22回に亘り合計20億3 250万円(1回当たり2000万円から2億9000万円,運転資金) 5 本件各融資と経営判断の原則の適用 (1) はじめに 法廷意見で指摘する平成6年3月期末現在のDグループの債務超過額,営業損失 及び経常損失の実態,並びに前項で見たとおりの各融資先企業の平成6年3月期現 在の売上高,営業損失,借入総額,債務超過等の状況からすれば,本件で実行され た各融資を回収することは,その融資時点においても実際上不可能に近いことが見 てとれる。
ところで,被告人らは,本件各融資は,損失の極小化を図ること等を目的として 行ったもので,結果的に回収不能に陥ったとしても経営判断の原則の適用により, 被告人らはその責任を負わない旨主張している。
実質破綻状態にある企業に対しても,その清算や再建あるいは再編のために必要 があるときは,実質的には既存の債権回収に必要な経費の趣旨を込めた無担保融資 がなされ得ること,及びその融資の可否の判断には経営判断の原則の適用があり得 ることは,上記2,3にて検討したとおりである。
そこで,被告人らの主張に鑑み,上記3で検討したところを踏まえた上で,本件 融資が経営判断の原則が適用される状況の下でなされたと言えるか否かについて, 本件における融資中,最も早期のものであり,かつ,約2か月間半の間に実行され た融資について被告人Aの責任が問われている株式会社Fに対する融資につき検討 する。
(2) 本件融資がなされた当時の株式会社Fの経営状況 株式会社Fは,その営業能力に対比して過大な設備,過剰な従業員で営業を開始 したところから,平成6年3月期は上記4(2)に記載したとおり大幅な赤字を計上 した。
拓銀では,同社に社長と専務を出向させ,過剰人員の削減を含む経営の合理化を 図る一方,平成6年4月からは行員2名を営業社員として出向させて営業力の強化 を図ることとしていたが,平成6年3月期末に作成された平成7年3月期の事業計 画では,平成6年3月期に比すれば大幅に業績の改善が見込まれるものの,営業損 失12億8500万円,期末借入金残高は44億3400万円で平成6年3月期よ り12億4500万円増加するというものであった。
また,株式会社Fは,毎月の売上高では当月の必要経費を賄うことができず,そ の不足資金を拓銀からの融資に頼らざるを得ない状況にあり,本件各融資は,株式 会社Fの経常の運転資金の不足分を補填するものであった。
(3) Dグループ全体の再編,再建計画の進捗状況 ア平成5年7月5日の経営会議 同日の経営会議では,原判決の認定するとおり,審査第一部よりDグループはど の事業も収支大幅マイナスであり,実質倒産状態にあることが計数を含めて指摘さ れ,被告人A,同Bらの経営陣は,Dグループの実態を認識した。


同会議で配布さ れた資料によれば,向後1年間の本件融資対象会社3社に対する赤字補填資金が5 8億円であり,ホテル設備最終支払い資金59億円,G地区総合開発土地取得費5 0億円等を加えた新規資金需要が178億円に達するとされていた。
同会議では,Dグループの再編案が付議されたが,同日は審議時間がないので緊 急事項についてのみ承認し,再編方針については,更に詰めて再度経営会議に諮る こととされた。
なお,原判決は,同日付議されたDグループ再編案は,被告人Aの発言により不 承認となった旨認定しているが,同日の会議記録及び次に検討する同年8月23日 の経営会議の記録からして,同日の会議で再編案が不承認とされたものではなく, 単に審議が先送りされたにすぎないものと認められる。
もっとも,同日の経営会議に付議された再編案は,本件記録による限り,再編後 の各組織の概要やその再編後の事業の見通し等についての具体的な計数の記載はな く,また,その再編によりどの程度回収が見込めるか,その間に要する見込み経費 等の記載もなく,言わば「方向稟議」程度のものにすぎないのであって,到底「再 編案」などと言えるものではない。
イ平成5年8月23日の経営会議 同日の経営会議の議事録には,Dグループの再編案については,骨子,次の記載 がある(原判決は,拓銀におけるDを巡る会議の状況を詳細に認定しているが,こ の部分は何故か認定されていない。)。

受注予定者の決定

公社は,あらかじめ発注予定工事の工事件名,工事概要,工事の格付等級及び申込期限等を公示し,工事希望型指名競争入札で土木工事の発注を行っていた。
被告らのうち,基本合意により受注予定者とされた業者は,他の入札参加者が基本合意に参加していた業者(以下「仲間業者」という。)であれば受注調整を行うことが容易であることから,仲間業者に対し工事希望票の提出を依頼し,依頼を受けた業者は,受注予定者の依頼に応じ,公社に対し工事希望票を提出するなどしていた。
受注予定者は,遅くとも現場説明会までには,当該工事の入札に参加する業者を知ることができた。
入札参加者の中に仲間業者以外の地元業者や専門業者が指名されている場合は,受注予定者がそれらの業者に個別に協力を依頼し,協力が得られたときは受注調整が成立するが,協力が得られないときには受注予定者と地元業者等との間で競り合いとなる場合があった。
受注調整が成立した案件については,受注予定者が受注すべき価格を決め,少なくとも入札が実施されるまでの間に,相指名業者に入札してもらう価格を連絡したり,相指名業者の入札価格を確認したりするなどし,自社が予定価格近似の金額で落札できるよう働きかけ,相指名業者は受注予定者の落札に協力していた。
その結果,受注予定者は,予定価格近似の金額で工事を落札することができ,これによって八王子市は,競争が成立した場合の落札金額との差額に相当する損害を被った。

7月5日の経営会議でDグループの再編案を策定し,打ち合わせる旨述べた が今暫く猶予されたい。
D,Eの抜本的収支改善計画の策定を急がせ,(A)G事業の展望が開かれ ること,(B)ホテル事業をやっていけることを第一義としたグループ再編案を検 討し,別途,経伺する。
なお,同日の会議議事録には,被告人Bの「我々もようやくDグループの実態が 分かりかけてきたところだ。
もう少し時間がほしい」との発言が記録されている。
ウ平成6年1月17日の経営会議 上記平成5年8月23日以降,初の経営会議である。
その間5か月に亘って経営 会議が開催されていないが,本件記録上,その理由は詳かではない。
同日の経営会議は,専らG開発の問題が論議され,Dグループ再編の問題は論議 されていない。
なお,同日の次の経営会議の開催は,平成6年5月16日で,同日もG開発の問 題が論議され,Dグループ全体の問題は論議されていない。
Dグループ全体の再編問題が本格的に経営会議で採り上げられたのは,漸く平成 7年1月27日からであり,それまでの間,本件各社の経常的な赤字体質につき抜 本的な対策を施すことなく,本件各融資を継続していたのである。
(4) 小括 以上,拓銀におけるDグループ全体についての取組状況を見たが,本件融資時点 では,Dグループの再編計画は未だ具体的な検討がなされておらず,問題の先送り 状態の下で株式会社Fの月々の赤字を補填するべく本件融資がなされていたものに すぎず,株式会社Fに対する本件融資が,Dグループ全体の再編計画の下での損失 の極小化を図る過程でなされたものとは到底認められないものであることは明らか である。
6 おわりに 上記5(3)にて通覧したように,被告人A,同Bを含む拓銀の経営陣は,平成5 年7月の時点で,Dグループが債務超過状態にあり,赤字を垂れ流している状態に あることを認識しながら,本件の各融資がなされる平成6年4月までの間,Dグル ープの経営改善,再建に向けての抜本的な対策には何ら着手することなく,法廷意 見にて指摘するようにその実現可能性の極めて薄いG開発に意を払うのみで,Dグ ループに恒常的に発生する赤字の補填資金としての本件犯罪事実に係る各融資を漫 然と継続していたものであって,自行の融資金の管理に意を払い不良債権の発生を 抑止するという,銀行の取締役として当然の責務を果たしていなかったと言わざる を得ないのである。


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再建

再編計画
再編計画の検討期間中に必要な資金を融資する場合 相手方企業が実質破綻状態に陥った場合,当該相手方企業の再建の可否及び再建 を図る場合の手法等を検討するには一定の時間を要する。殊に,相手方企業の規模 が大きかったり,企業グループを形成している場合などでは,相当の人的資源の投 入が必要とされ,その調査,検討作業に必要な資金を確保する必要があるととも に,その検討期間中の運転資金を確保する必要がある。それらの資金を実質破綻企 業が調達できなければ,主力銀行としてその運転資金の不足分や,調査・検討作業 に必要な費用相当額を追加融資せざるを得ないが,実質破綻企業がその追加融資に 見合う担保を提供することなど凡そ不可能であって,実質無担保融資とならざるを 得ない。